イギリス都市計画制度の基礎を学ぶ
私が住むイギリスを訪問してくる日本人の多くが語るのが「イギリスの、ヨーロッパの街の美しさ」についてです。
映像で何度も見ている欧米の街の風景にあこがれ、実際に訪れてみると想像通り、またそれ以上に調和のとれた町並み、都市空間の豊かさ、生活空間の快適さといったものに心を打たれるようです。
日本にはない整然とした街並み、何気ない住宅街のたたずまい、小さな田舎の村の絵葉書のような風景に感動してカメラやスマホを向ける日本の人々は、自分が住んだり働いたりする地元の街や職場のあるビル街、通勤途中に見る車窓の風景に感動して写真を撮りたくなることはないでしょう。
京都や金沢といった観光地の特別に保存維持された区域をのぞいては。
日本人が日常的に暮らしている身の回りの生活空間はイギリスのそれと比べて美しいといえるでしょうか。
そうでないとしたら、その都市空間の質の違い、生活空間の差にはどういう理由があるのでしょうか。
これは私自身が初めてヨーロッパに海外旅行した時に抱いた疑問です。
パリやヴェネツィアといったいわゆる観光地ではない、地元の人々が普通に生活を営む町で、偶然に足を踏み入れた当たり前の住宅街にも古くても手入れの行き届いた家々が整然と並んでいます。
そこには、住む人たちが自分の暮らす街に抱く愛情や誇りが感じられるような静かな豊かさといったものが感じられました。
日本なら、自分の家だけ目立つような「個性的」で「一味違う」デザインや素材、色の家を建てたいと思いそれを実行して悦に入っている人がいそうなものですが、どうしてそういうことがないのだろうかと思ったものです。
その後、ヨーロッパの街づくり、都市計画の決まりなどを知ってなるほどと思いました。
あの風景は古くからある、歴史あるヨーロッパの街に自然に出来上がったものではなく、そこに住む人々がみんなで守り維持してきた努力のたまものなのだと。
そして、そのような街づくりの決まりや実際の適用の仕方などを勉強したいと思い、イギリスで都市計画を勉強することに決めたのです。
イギリスには長い歴史のある、確立した都市計画制度が存在し、戦後整えられた法律や民主的な制度の枠組みがほぼ形を変えずに長い間国民に支持され続けているからです。
私はマンチェスター大学で都市計画を学んだあと、イギリスの複数の地方自治体の都市計画課で都市計画家として実務も行ってきました。
その経験を通じて、都市計画制度が具体的にどのように個々の街を形作り、影響を与え続けていくのかを見てきました。
さまざまな地域の異なる条件のもとで携わった数々のプロジェクトから得た経験の中には、日本の街づくりにも生かせるヒントがたくさんあります。
そんなヒントを知り、具体的に自分の街に生かしたいという人のために、イギリスの都市計画制度についての基礎が学べる講座を用意しました。
この講座を学ぶことで、イギリスの景観がどのような制度によって守られているのかがわかり、その仕組みや考え方を日本やほかの地域に適用することができます。
都市計画について勉強中の人にはもちろんですが、特に基礎知識がない一般人でも理解できるように、平易な言葉でわかりやすく説明することを目指しました。
この講座は下記の6つのレッスンに分かれています。
1.「共有財産としての景観を守る」
2.イギリスの都市計画:歴史と背景
3.都市計画申請制度
4.都市計画申請に反対する方法
5.Development Plan(開発計画)
6.イギリスの都市計画家(Town Planner)という職業
【文書・ビデオ・音声】
それぞれのレッスンはテキスト文書で読むこともできますが、それをまとめたビデオも用意しています。
ビデオはスライドと音声でレッスン内容を説明していますので、ビデオとしても音声だけでもご利用になれます。
お好きな方法で読んだり見たり聞いたりしてください。
【復習クイズ】
また、それぞれのレッスンの後に復習のためのかんたんクイズを加えました。
レッスンの内容を理解したかどうかをチェックしてみましょう。
【パワーポイント資料付き】
各レッスンには講座内容のポイントをまとめたパワーポイントのスライドファイルが添付されています。
このスライドを使ってご自分の学習用に役立てることもできるし、グループ学習やプレゼンテーションのために使うこともできます。
ダウンロードして、ご自由にご利用ください。
それでは、最初のレッスン「共有財産としての景観を守る」から見ていきましょう。